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福岡高等裁判所 昭和24年(つ)380号 判決 1949年11月25日

被告人

三原良雄

外一名

主文

原判決を破棄する。

被告人三原良雄を懲役一〇月に、同有村吉藏を懲役四月に処する。

被告人三原良雄に対し、未決勾留日数中原審における分三〇日を右本刑に算入する。

被告人有村吉藏に対し、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

押收に係る大島産黑糖七、〇九七斤の換価代金一〇一、四一六円一三錢はこれを沒收する。

理由

原審檢事新川吹雄、被告人三原良雄の弁護人後藤英橘及び被告人有村吉藏の弁護人松村鉄男の控訴趣意は末尾添附の控訴趣意書記載のとおりである。

原審檢事新川吹雄の控訴趣意について。

本件記録並びに原審及び当審において取り調べた証拠を彼此綜合してみれば、本件船舶光栄丸が連合國人である中華民國人関景洋の所有に係ること所論のとおりである。そこで、連合軍最高司令官から日本政府にあてた昭和二二年八月五日附船舶に対する裁判権の行使に関する件の覚書についてみると、日本の政府、裁判所及び関係官庁は、連合軍に附属し又は随伴する連合國人又はその団体(法人を含む)の所有し又はよう船し若しくは正当に占有する船舶に対し、裁判権を行使してはならないし、又船舶の関連する刑事々件については、日本の政府、裁判所及び関係官庁は、連合國又は連合國國人の所有し又はよう船し、若しくは正当に占有する船舶に対して裁判権を行使してはならないことになつている。元來本覚書は一九四六年二月一九日附連合國最高司令官の日本政府宛覚書(刑事裁判権の行使に関する件)を船舶の方面に拡張し、連合國及び連合國人の財産の保全と連合國船舶関係の犯罪を繞る紛爭を回避する意図の下に発せられたものであるから、本覚書の対象となる船舶は、その種類形態又は大小の如何はこれを問わないこと明白である。さすれば、本件船舶光栄丸は、前説示のとおり、中華民國人関景洋の所有であるから、その船藉港、船長又は同船の占有関係の如何を問わず、日本の政府、裁判所及び関係官庁は、少くとも前示覚書に基く連合國占領軍当局の指示かない限り、同船舶に対する裁判上の処分即ち差押、搜索、檢証、沒收及び換価処分等一切の強制措置をとることは許容されないものと言わなくてはならない。記録を調べてみても本件船舶につき、何等連合國占領軍当局の指示があつた形跡は存在しないのであるから原判決が、元來沒收することかできない本件船舶につき、関税法第八三條第一項を適用して沒收の言渡をしたのは、前示覚書の趣旨を誤解し、不法に法律を適用したことになり、論旨は正に理由があり、原判決はこの点において破棄さるべきものである(この破棄の理由は、共犯者であつて共同被告人である被告人両名に共通であるものと認める)。

ところか、論旨は、更に、本件船舶は沒收することかできないものであるから、その価格に相当する金額を被告人両名から追徴すべきものであると主張するので、この点につき按ずるに、関税法第八二條第一、二項は犯罪に係る貨物又はその犯罪行爲に供した船舶の沒收につき規定し、同條第三項は前二項の規定により沒收すべき物の全部又は一部を沒收することかできないときは、その沒收することができない物の原価(犯罪行爲の用に供したる船舶であるときは、その価格に相当する金額を犯人より追徴するとあつて、同條項による追徴は、元來同條第一、二項により、法規上当然沒收することができる物ではあるか、たまたま、何等かの障礙(例へば物の滅失又は船舶の難破等)により、沒收することかできないようになつた場合に限られるのであつて、他の法規等により、叙上の沒收規定の適用を排除せられているような場合は、これを含まないものと解するを相当とすべきことは、その文理の上からも、又同條の律意から見ても、まことに明らかである。さすれば、本件船舶は、前説示のとおり、法律と同一の效力を有する連合軍最高司令官の覚書により、同法第一、二項の沒收規定の適用を排除されているから、同條第二項の規定の適用もまた当然排除さるべき筋合である。従つて、本件船舶が沒收し得ないからといつて、それに代えて被告人両名からその価格を追徴することは到底許容さるべきでない。論旨は理由がない。

弁護人後藤英橘の控訴趣意第一点について。

貨物の輸出、入につき免許の制度を採用している所以のものは、関税定率法等に基き、その輸出、入せんとする貨物につき、一定の関税を確保せんがためである。故に若し、外國から同一船舶に貨物を積載してきて、税関の免許を受けないで、日時、場所を異にし、その貨物を陸揚げ輸入するような場合には、その陸揚げごとに関税を捕脱する結果となり、従つて、また、関税法違反罪はその陸揚げことに成立するものと解するを相当とする。今本件において、原判決が確定した事実につき、これをみれば、被告人等は判示のとおり、大島郡德之島において積載した黑糖を税関の免許を受けないで、その日時及び場所を異にし、二回に亘り、陸揚げして輸入したというのであるから、前説示の理由によつて、その陸揚げごとに別個に判示の関税法違反罪が成立することになるから、被告人等の所爲は、これを併合罪として処断すべきであつて、前後二個の事実を合わせて包括一罪と観るべきものではない。論旨はひつきよう独目の見解の下に原判決を非難するもので、採用するを得ない。

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